オーストラリアのお葬式と日本のお葬式の多分一番違うところ
オーストラリアのお葬式で欠かせないのが
Eulogy(ユーロジー)
お葬式の最中に参列者の中から数人が前に出て話をします。
まあ日本で言う「弔辞」「お別れの言葉」的なものです。
が、似ているようでちょっと違います。
日本だとどうしても固くなってしまいがちでもあり、呼びかけ調が多かったり、忌み言葉を避けるとか決まり事があります。
オーストラリアのEulogy にも様々なスタイルがありますが、内容的には
故人のライフストーリー(生まれてから亡くなるまでの生涯、そのハイライト)
性格、人となり
趣味
功績
詩や小説、エッセイなどの一部
等を織り交ぜたものが多いです。
そしてその中に欠かせない要素、日本と絶対的に違うところ、それは
笑い!
です。
お葬式なのに?と思われる方もいるかもしれませんが、オーストラリアのお葬式では必ずと言っていいほど笑える思い出話が語られます。
固めの宗教式でも、誰か一人は思わず顔がほころぶようなエピソードに触れます。
故人の子供の頃、若い頃、パートナーや友達との面白エピソード
思わず笑ってしまう癖
いつも言っていた聞き飽きたギャグ
等、思わずぷぷっと笑ってしまうものから、思い出すと悲しいけど爆笑して泣き笑い、みたいなものまで様々です。
そしてその聞いた話を、お葬式の後のWakeという集まりでもっとしたりとか。
悲しい機会だけれど、故人の人生には楽しいエピソードもたくさんあったはず。
だからそれをお葬式で参列者とシェアする。
とってもいいことですよね。
ちなみにEulogyは自由に書くものではありますが、テンプレートや文例も検索するとたくさん出て来ます。
そして、たとえ笑える部分があっても、故人について話をするのは感情がこみあげてくることもあります。もしご自分で話すのは難しそうということなら、原稿を私が代わりに読み上げることもできますのでご心配なく。
お葬式をする意味って?
お葬式の意味って何だと思いますか?
故人を偲ぶ、弔う
故人に敬意を払う
故人との最後のお別れの場
故人の死について人々に告げる
など、色々と頭に浮かぶと思います。
こう読むと、お葬式は「故人」のためのものと言う感じですよね。
でも偲ぶ、弔う、お別れなど、実際にするのは遺族です。
お葬式は故人のためであることはもちろんですが
遺族(と他に葬儀に出席する人々)のためのものである部分もかなり大きいのです。
きちんとしたお別れの場を設け、
自分と故人との関係を振り返り、
今迄の関係が終わりを告げることを自覚し、
故人との新しい関係が始まることを受け入れる。
英語ではクロージャ― (closure) と言われることもあります。
本を閉じるように、故人のストーリーが終わったことを認めること。
式を段取る、
手続きをする、
弔辞(Eulogy)を書く、
故人に関わってきた人と話をする
ということを通じて決して短くはないクロージャ―への第一歩を踏み出し
本を閉じ、心の本棚にそっと戻す
ということがことができるようになるための、区切りの儀式なのです。
お葬式をしたからと言って、愛する人が亡くなったことをすぐに受け入れられる人なんていません。
すごくいい本、すごく悲しい本を読んだ後、感動して本を閉じてもその内容がしばらく頭に残っているような感じ、好きだった部分を読み返したり、人にその話を伝えたり、同じ著者の作品を読みたいと思ったり。
そんな感じに少し似ているのかもしれません。
気持ちが落ち着くまで、悲しみが癒え、ゆっくりと以前のような生活に戻れるまでには時間はかかります。
お葬式をしないと、故人がもういないという事実が受け入れにくいことがあるそうです。
ちゃんとした区切りの儀式がないから。
結婚式をして皆の前で誓いの言葉を言った人と婚姻届だけ書いて全く何もしなかった人。
どっちの人が「結婚した感」を感じるかは明白です。
愛する人が亡くなったことは悲しすぎて、目を背けたい。
でもお葬式をしてその事実を認めなければ、いつ認めたらいいのか伸ばし伸ばしになってしまいます。
だからお葬式をして、故人の死に向き合う(向き合い始める)チャンスを自分に与えてあげる。
お葬式の中で故人の生にも向き合うというポジティブな意味も見出す。
そうすれば悲しみが癒えていく、悲しみから立ち直っていくのも少しだけ早くなるはずなのです。
そして私はそんなお葬式を執り行えるセレブラントでありたいと思っています。
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Celebrant from Japan - Megumi Carver ♥ SYDNEY Celebrant
お棺のはなし
お棺、と言うと以前まで私の中では
こういうやつしか思い浮かびませんでした。
それから桐とかの木で横に何か彫ってあるものとか。
一方、オーストラリア(というか欧米)でお棺というと
こういうものを想像なさる方が多いのではないでしょうか。
映画に出て来そうなやつ。
まず、十字架がついているものは最近は少数です。
キリスト教の人ばかりじゃないですしね。
そしてオーストラリアのお棺はデザインも素材も多彩!
一般的なこんな感じのデザインはもちろん、
前回の記事の写真にもあったようなバスケットタイプ
安価でペンでメッセージを書いたりできる段ボール製のもの
棺の外側の色々なデザインが選べる
(Lifestyle coffin社より)
など、さまざま。
日本では顔が見えるように窓がついているものが大多数ですが、オーストラリアではそういうデザインはあまりありません。蓋が真ん中で分かれていて開くようになっているものはあります。
ですが、上の写真を見てもわかるように、オーストラリアでは持ち手がついているものが主流です。
それはなぜかと言うと、オーストラリアでは火葬が主流になってきてもいますが、土葬も結構あるので、家族や葬儀会社の人が柩を運ぶときに持ち手がないと運べないから(だと思う)
ちなみにネットで調べたら、日本でも花柄とかピンクとかグリーンとかありました。
生きているうちに棺選びをする方ってあまりいないかもしれませんが、家族に希望を伝えておくのもよいのでは?
ウェブサイト:
日本人フューネラルセレブラント
初めまして。
シドニー在住、日本人フューネラルセレブラントのカーヴァー恵です。
「フューネラルセレブラント」とは 無宗教のお葬式の司式者 です。
欧米のお葬式=教会
と思いがちですが、オーストラリアのような欧米諸国では宗教にとらわれない葬儀をしたいという方が多く、特に私の住んでいるオーストラリアではセレブラントによる無宗教のお葬式が主流になってきています。
オーストラリアでは、お葬式は
Celebration of life(命を祝う式、機会)
つまり故人の命と一生をお祝いする場でもあるとよく言います。
私は最初それを知った時、それってすごくいいお葬式だろうなーと思いました。
お葬式と言うと悲しい日、最後のお別れという印象が先行してしまうけれど、大切な人の命と一生を祝う、自分たちがその人に関われたことを祝う、というポジティブな機会でもあると思いながらお葬式をする、参列するというのは素晴らしいことだと。
宗教式でも別にその想いがないわけではないと思いますが、無宗教のお葬式はこの祝う部分がより大きな意味を持ちます。
神や仏といった存在と故人との関係がないので、式の中でそうした存在を称えたり、彼ら(?)に関する話もありません。
だから故人の人生や功績を称えることが式の大きな内容の一つなのです。
でも、私が日本で育ってきて、そして今迄にオーストラリアで経験した「お葬式」のイメージはそれとは遠いものでした。
私はお寺の孫で、子供の頃に祖父母の家(お寺)に行くとよく葬式饅頭(葬式マドレーヌなんてのもあった)とか蓮の花ののしがかかった箱のお菓子なんかがおやつに出てきて、死んだ人のためのお菓子を食べるなんて、と思って怖かったことがありました。(食べたけど。笑)
他にも喪服、物々しい霊柩車、顔にかける白い布など、そしてオーストラリアでも初めての土葬に立ち会った時の埋めるということへの抵抗とか、私の中のお葬式のイメージにはどうしても悲壮感、ちょっと怖い感じ、ネガティブな感じが付きまとっていて、セレブレーションって言ってもなあ。。。と言う感じでした。
私はもともとマリッジセレブラントという無宗教の結婚式の司式者で、その中で結婚式もお葬式も状況は違えど門出の儀式だとは思い始めていて、知り合いのセレブラントにも「恵もフューネラルセレブラントやったら?」と言われていました。
でもお葬式の司式者を務めるのは躊躇していたんです。
結婚式とは全然違うし、と。
自分の中のお葬式に対するネガティブな感情も、躊躇した理由として確実にありました。
ところがある日気づいたこと。。。
セレブラントって英語だと
Celebrant
祝いを意味する
Celebration
を執り行う人ってことなんだ!
何年もやっていたのに、言葉の意味に関しては考えたことがなかったんです。
でもこの意味に気づいた時「お葬式で人生を祝う、つまりセレブレーション、だからセレブラントが式を執り行う」という事実が急に当然のことに思え、急にCelebration of lifeの部分がしっくりきました。
今迄理屈で分かっていたことがもっと現実味をもって心に響いた感じでした。
そしてそう思った時に背中を押されたというか、それなら結婚式の経験を生かしてお葬式もできるんじゃないかと思ったんです。
それから色々と実際にオーストラリアでのお葬式について読んだり調べたりして行くうちに、自分のお葬式に対するネガティブな思い込みが薄れていきました。
という訳で、フューネラルセレブラントになりました。
死を悼むことはもちろんですが、同時に生を祝うお葬式を、心を込めてご遺族と一緒に作り上げていきたいと思っています。
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